生まれて初めてサッカーというものを観に行ったんだ(2019/11/25)

AYA世代の苦悩

いい歳したおっさんが言うセリフじゃないんだけど、私は先日、生まれて初めてサッカーというものをスタジアムまで観に行ったんだ。そもそも、スポーツというものを観戦する事自体が生まれて初めての事だった。

こういう事を言うと不思議に思われるかもしれないが、私は統合失調症でずっと闘病生活を送っていた為に、普通の人が普通に経験し得るような事を、私はこれまで何も経験出来ずに生きてきた。病気という、やむ得ない事情を抱えていたのだから仕方のない事なのかもしれないが、これは若くして闘病生活に入った人、いわゆる『AYA世代』という言葉が指し示すような層の人にとっては、かなり深刻な問題なのである。

『AYA世代』という言葉は、最近では若年層のがん患者に対して多用されているようだが、この言葉自体はずっと前から存在し、そもそもはがん患者に限定される事もない、もっと広い範囲を内包する概念だった。

多感な時期(10代)やこれからの人生を踏み出す時期(20代)に、本来はその年齢で体験すべき事、または解決すべき人生の課題、といったものに取り組めなかったという事は、その後の人生に想像以上の影響を与える。勉強、恋愛、就職、遊び、そのほか家族や社会との関わりなどなど、人はそのライフステージにおいて相応の経験をすべき生き物なのだ。それが病気になった所為で出来なかったという事は、当事者からすれば『無念』というより他に言いようがない。

「府中の日」のチケットが当たる

ある日、そんな私に幸運が舞い込んだ。

ツイッターを見ていたら、我が地元の府中市のツイッターが【「府中の日」FC東京ホームゲームに無料招待】という企画を実施しているというツイートをしていたのだ。先日は日本ゲーム大賞の賞品が当たり、授賞式に一般招待者として参加してきたという前例もあった事から、『もしかしたら、また当たるかもしれない…』と思った私は、即座に府中市のホームページへ飛び、迷わず応募した。

そしたら、当選した!!

これは多分競争率が低かった所為だろう。何せ500組1000名もの人を招待する企画であるにもかかわらず、応募できるのが府中市民限定だったのだ。府中市民はおおよそ26万人程度しかいない。その中で府中市のホームページやツイッターをチェックしていて、なおかつサッカーファンであり、しかも当日の予定が空いてる人、という条件が揃う応募者はそうは多くはなかったのではないかと予想される。

でも何にしろ、私がそこに応募してみようという気になったという事自体が、私の気持ちが外に向いている証拠であり、一つの大きな一歩だったのだと思う。チケットが当たった事は、素直に嬉しかった。

初めてのスタジアム

FC東京の試合がある味の素スタジアムは府中市と調布市の境目あたりにある。つまり府中市に住んでる私にとっては地元なのだ。その地元のスタジアムに、私は今まで一度も入った事がなかったのである。しかし今回『府中の日』でチケットを手に入れた事により、初めてスタジアムに入るという事が叶った。

味の素スタジアム内
初めての味の素スタジアム

スタジアムに入ったら、ちょうど試合前の練習をしているところだった。広い! デカい! 人が多い! 気分が上がる!!

初めてのサッカー観戦

この日は雨だった。初めてのサッカー観戦という意味ではあまり良い条件ではなかったかもしれない。しかも私はソロでの参戦だ。雨を避けられる屋根のある席に陣取りたかったが、物販でグッズを買っていたら、すでに座席は大方が埋まってしまっていて、それは叶わなかった。

でも、私はレインコートを着て、雨の当たる席で頑張って応援した。何せ、初めてのスポーツ観戦な訳だし、FC東京の勝つところを見たいという気持ちも強く持っていた。FC東京は今、首位争いのトップを走っている。応援にも熱が入る!

具体的な試合内容についてはここでは述べない事にするが、結果は1−1のドローとなった。アディショナルタイムの最後の最後で森重選手のゴールシーンを見れたのは良かったと思う。

FC東京の選手たち
FC東京の選手たち

失われた時間を取り戻して行くという事

何でも経験だ。生まれて初めてのサッカー観戦を終えて、私は心からそう思った。
FC東京の応援団が雨の中にもかかわらず気合の入った応援をしていた事や、試合開始前にFC東京の応援歌『You’ll never walk alone』をスタジアム全体が一丸となって合唱した事などなど、テレビでは分からない、その場にいなければ決して分からないモノを、私はスタジアムで感じ取る事ができた。

それに闘病生活によって世間の輪からはみ出てしまった私のような者でも、味の素スタジアムは暖かく迎え入れてくれたし、スタジアムの中にいる時、私は自分の病気の事を忘れ、普通の人の一人として振る舞う事が出来た。それはとても嬉しい事だった。
こういう経験を積み上げていく事は、闘病生活で失われた時間(AYA世代の抱える問題)を補っていく意味で、とても重要な事になっていくと思う。

『府中の日』という事をきっかけにして、FC東京や味の素スタジアムと良い縁が出来た事を嬉しく思う。この縁を大事に育てていきたい。今度は自分でチケットを買って、またスタジアムまで見に行くぞ!! 絶対に!!