ハッキリ言って、勉強はメンタルの病気のリハビリに向いていない。私の統合失調症の場合は特にだ。
私のiPadには医学書の『統合失調症のみかた、治療のすすめかた』という電子書籍が入っているのだが、そこに以下のように書いてあったので少し引用したいと思う。
—–『統合失調症のみかた、治療のすすめかた』より引用—–
そもそも統合失調症は認知機能の障害が生じる疾患であり、適切な治療を受けていてもIQは平均で92ほどに低下する中、多剤大量療法ともなると平均で84ほどまでに低下していたという。統合失調症の発症でIQがマイナス8になるのは仕方がないが、多剤大量療法でさらにマイナス8になるのは踏んだり蹴ったりとしか言いようがない……頭が悪くなる薬なんて飲みたくないと思うのは私だけではない筈だ。
—–引用ここまで—–
これはなかなかに残酷な事が書いてある。この記述は私にとって『統合失調症患者は馬鹿であり、つまり統合失調症患者である私は馬鹿である。』という結論を導き出すには十分すぎる説明であった。それは、この事が既に実感として実際にあったからなおさらだった…
そんな私だったが、この春私は放送大学を無事に卒業する事が叶った。闘病生活の傍ら10年以上の歳月をかけて掴み取った悲願の卒業だった。
で、実際にここまで勉学を進めていくにあたって、医学書の記述が本当にその通りであるという事を、私は嫌というほど思い知らされたので、その事をここで告白しておきたい。それはとても残念な事ではあったが、実際問題私は本当に馬鹿であったし、それは疑いようのない事実だった。だから勉強はリハビリとしては全く機能せず、卒業までの道のりは辛く険しいものとなった。
私の経験上、統合失調症の人に、勉強はまったくオススメできない。その事を同病者の方に、私は強く強く訴えたいと思う。別に無理をして勉強をする必要はないのだ。特に技能の習得みたいなものはハードルが高い。なので新しい事を始めるのではなくて、今まで出来ていた事の中からやりたい事を見つけて、それに取り組めば良いのだと思う。そっちの方が、たぶんリハビリとしては効果的な筈だ。
先の引用文にも書いてあるとおり、IQの低下を引き起こす原因は認知機能障害にある。なので病気回復を目指す上で重要になるのは『如何に認知機能を回復させるか?』という事になるのだと思う。
私は過去の大規模な薬減らしで、必要最小限の処方になった。その頃からだろうか。認知機能が回復してくると、だんだんとまともな事を感じるようになり、まともな事を考えられるようになっていったように思う。霧中から現実の世界に戻ってくるような感覚はハッキリとあったと記憶している。医学書の中でも指摘されている通り、多剤大量療法の問題点は無視できないレベルで存在していると思われる。なので患者としては、主治医とよく相談をし、必要最小限でちゃんと効果があるような、自分に合った薬に巡り逢えるように適宜薬を切り替えるなどの工夫が必要になってくると思う。
あと、体力が低下しているようであれば、元々あった体力を取り戻す事で、ある程度まで認知機能を回復させる事も出来るように思われる。みんなに効果があるかは分からないが、少なくとも私はそうだったので、取り組む価値はあるだろうと思う。
認知機能が回復してくれば、勉強も分かるようになってくる。勉強は、そうなってから始めても遅くはないだろう。
私はいま放送大学大学院で修士選科生として学びを継続している。いろいろハンデは背負っているけれど、それでも私は勉強が好きなのだ。
統合失調症になって以来、学校にろくに行けなくなってしまったために、私はまともな教育を受ける事ができなかった。でもだからこそ『学校へ行きたい!』『勉強がしたい!』という気持ちは強く持っていた。そのハングリー精神が今の私を形作っていると言って良い。
今は病気の症状が治っているから、やっとやりたい事が出来るようになったのだ。なので、放送大学大学院では、もう少しだけ勉強を続けさせてもらおうと思っている。がんばるぞ!