面接授業に行く様になって『私も社会の一員なんだ』という気持ちが芽生えた。 大勢でひとつの授業を聞いたり、通勤時間帯に電車やバスで街中を移動するなど、私の人生では今まであまりなかった事なんだ。主治医が私に対して事あるごとに『社会参加』の重要性を説いていたのはこういう事だったのか…

前に受けた『学外授業』なるモノが、今の私にとってとても意味のある事だった。それはリアルブラタモリの様な授業で、先生の解説を聞きながら30人ぐらいの学生が街中を列をなして歩く。これがまるで遠足の様でとても楽しかったのと同時に、その長時間の集団行動が私の意識にある変化をもたらした。

私は中一で不登校になり、それからずっと社会参加や集団行動とは無縁の生活を送ってきた。なので今回『遠足の様に皆で列を成して歩く』など、私にとっては実に20年ぶりの事だった。この体験が私の意識を変えた。私の中で永らくオフになっていた『社会性のスイッチ』が、遂にオンに切り替わったのだ!

社会性のスイッチがオンになった事で、私も社会の一員なんだと実感できる様になり、もう街を歩いていても疎外感を感じる事もなくなった。 先日、この意識の変化を主治医に伝えた所『凄い…』と感心された。そして『楽になったんだ…』と聞かれたので『はい。だいぶ楽になりました。』と答えておいた。

これは現実認識に破綻をきたした統合失調症患者が、その後長い年月を経てめでたく正しい現実認識を取り戻したエピソード、と言っても差し障りないと思う。そう考えると、もしかしたらこれは凄い事なのかもしれない。

薬が減ったからなのか、病気が治ってきているからなのか、その両方なのかは分からないけれど、良い方向に向かっている事だけは確かだ。ずっと治らないモノだと諦めていた病気が、まさかこんな風に展開していくとは…… こんな事、夢にも思っていなかったよ。